上野信一・パーカッション・エッセイ
秀れた打楽器奏者になるために

2回 チューニングを知って達人になろう!

今回は打楽器のチューニングです。
「それ、ちょっと苦手....。」という方がかなりいらっしゃるのではないかなと、

勝手ながら推測しています。打楽器以外の楽器の方なら「そんなことできて当たり前の

基本的なことじゃないんですか?」なんていう方もいるかもしれません。

でも、打楽器のチューニングは意外にデリケートで経験が必要なものです。
それは単に弦の張り具合や管の長さの調整をするのとは違って、 皮を張った打楽器は

たった一つの音を作るためにも多くのキー(ネジ)の音程が同時に関係していたり、

また楽器自体も多くの倍音を含んでいたりするからです。今回はそんな打楽器のなかでも代表的な

ティンパニ、 大太鼓、小太鼓について書いていこうと思います。

【ティンパニ】

まず自分が作ろうとする音をピアノ等で確かめながら歌ってみて下さい。
次に自分の歌う音をチューナーで測って高低の度合いを知りましょう。
ティンパニに限らず皮を張った打楽器類は、基本的に各キーが均等に張られている必要があるため、

ます図1のように対称位置にあるキーを、次に共鳴を得るために両サイドから始めて

それぞれ隣接したキーの音を合わせていきます。
                                                                    図1


ペダル・ティンパニやマシン・ハンドル式の場合、最初にその楽器の音域の最低音に調律します。

その時、音の高低だけではなく、ピッチの誤差から生じるうなりを聴いてそれを取り去ることを

同時に意識すると、 特に低い音のチューニングはやりやすくなります。ここでは倍音ではなく、

実音を聴いて下さい。
この基礎チューニングが良くできていないと全ての音が濁ってしまいますので、 落ち着いて、

あまり響き過ぎない広い静かな部屋で行いましょう。

チューナに頼るな

ここで注意。基礎チューニングをするときにチューナーは最初から用いない方が賢明です。

特に音名自動選択のチューナーは別の倍音を拾うことがあり、これではいくらチューニングしても

欲しい音は得られません。 あくまでも基音を聴くことです。チューニングでは機械に頼り切らずに、

必要な音を聴き分けられるように耳を訓練しましょう。

「手締めのティンパニで、便宜上、手前のキーから順に向こう側にチューニング(図2)してもよいか」

という質問がよくありますが、 答えは「Yes」です。最終的に音程が均一であれば手順にあまり

こだわらなくてもよいと思います。 しかし、ヘッドを張り替えるときなどの場合は、

ヘッドがある程度の張力になるまでは、 先に書いたようにすることをおすすめします。
いずれにせよチューニングはなれる必要が多いにあります。

                                                                      図2


ペダルは一気に

さて、次に演奏上の音程のチューニングについて、ペダルまたはハンドル式の場合、

音を合わせるときは下がった状態から音を上げてセットしていきます。

高い音から低い音に変える時には、 一旦低い音に戻してから上げていきます。その際、

セットする音を明確に意識し、 狙いを定めてペダルを踏み込んで一気にそのピッチに乗せます。

音を上げた後は、その付近で音をさぐったりしない方がいいでしょう。

よくハミングをする人がいますが、自分の欲しい音程かどうかを共鳴によって判断するためのもので、

これも一つの方法です。合わせようとする音と同じ音、または5度上をハミングしてみましょう。

いずれにせよチューニングは音と音が同調(共鳴)したときの響きの広がりを知るように

耳を訓練することが大切です。

 

ヘッド交換

フープとケトルはまず真円ではあり得ません。 そこで、フープとケトルの相性の良い位置を保つために

フープとケトルに印を付けておきましょう。 その上でケトルにヘッドを載せ、フープをセットするときは、

3-aのようにケトルとフープが同心円になるようにします。 図3-bのようにズレると正しい

チューニングができません。

                                                                         図3


ヘッドとケトルの摩擦

さて、今度はヘッドとケトルの摩擦の問題です。 よくヘッドとケトルの接触するところに機械用グリス

を塗る人がいますが、 これは摩擦は少なくなる反面、ヘッドに油が付着するために音をミュート

してしまいます。 摩擦やきしみをなくすためならまだロウを塗った方がマシですが、

現在は専用に開発されたグリスがあります。

しかし、最も効果があるのは、ティンパニ用「エッジテープ」を使用することです。これをケトル

に貼ればきしみもなくスムーズに音程が変えられ、今まで以上に伸びのある響きを得られます。

バランス・スプリング・ティンパニのペダルとヘッドのバランスについて

よくこの調整が難しいと言われますが、本来、調整済みで納品されたティンパニは、

正しく使っていれば改めてバランスを調整する必要はほとんどありません。 私自身、

余程のことがない限りさわりません。 問題なのは、いたずらにチューニングをしようとすることや、

指定音域以上の音を欲しさにキーを回してしまうこと。これはバランスを崩してしまう原因になります。

特に不特定多数が使っている楽器の場合にそういう場合が多いようです。

自分の前に演奏した人がどのような調整をしたかを知らないで楽器にさわるからでしょう。

ティンパニの調整をしようとする人は楽器の構造をよく知った人で対処してほしいと思います。

ティンパニの音域


ティンパニのバランス調整


運搬時にはヘッドを張る

こうして調整、チューニングされたティンパニですが、チューニングが狂うのはどんな時でしょうか。

それは楽器運搬の際に生じることが多いのです。 移動するときはヘッドがフープまたはケトルから

ずれないようにヘッドを張った状態で移動させましょう。 ヘッドがゆるんだ状態だと運送中にケトルと

ヘッドの位置がずれてしまいます。 さらにフープをつかんで持ち上げたり、押したりしないように、

あらゆるショックを避けて下さい。 運ぶ際には当然のことながら支柱の部分を持ち、

ペダルを浮かして運んで下さい。

ヘッドが古くなっていないかを確認するのも大事なことです。 ヘッドは通常の場合、

約2年の目安で交換すると良い状態で維持することができます。 また、異常に強打した場合にも

ヘッドが不自然に伸びて、チューニングがやりにくくなりますので注意。

またバランス式ティンパニの場合、古いヘッドを無理やり使っていると、

フィルムが伸びきっているためにバランス調整が効かなくなります。

 

【大太鼓】

それぞれのキーが均等に張られるべきことはティンパニと同じです。 大太鼓は基本的に言って表と裏皮の

共鳴によって響きを作りますから、 同じ張りに近い状態にすると考えて下さい。

人によって好みはありますが、 私の場合は音の輪郭と深みを出すために、

裏皮を表よりも少し張り気味にしています。 いずれにしても、大太鼓に求められている低いサウンドが

出るように張り過ぎに注意しましょう。

大太鼓の音はオーケストラの最低音を支えるので、これをいつも意識してチューニングして下さい。

メンテナンスの面では直射日光を避け、極度の温度、湿度の変化のないようにしたいものです。

楽器の歪みの原因となりますし、牛皮は乾燥し過ぎると紙のようになって破れやすくなります。

【小太鼓】

最後は小太鼓のチューニングですが、原則はティンパニと同じです。 どのくらい表皮を張るかは

好みがありますが、オーケストラ、 吹奏楽ではパリパリした歯切れの良い音が要求されます。

このため表皮はスティックが良くリバウンドする程度に張るというのが一つの目安です。

私の場合は響き線の反応を良くするために裏皮を表皮よりも高めに張ります。

(裏皮は表皮に比べて薄いので、キーを表と同じように回してもなかなか抵抗が感じられません。

このためにいつまでも締め続け、ヘッドが破れてしまうということもありますので注意。)

表皮の張り過ぎにも注意しましょう。響き線の音よりもパンパンする皮の音が強く出すぎてしまいます。

小太鼓のヘッドはかなりの張力がありますので、新しくヘッドを交換するときなど、

徐々にヘッドを馴らしながら張っていくようにして下さい。

あまり急激に張るとアルミのリングとヘッドの接着面が剥がれてしまいます。

小太鼓は裏皮がミソ

また、小太鼓の歯切れ良い音は響き線をひたすら張れば得られるというものではありません。

表皮を適度に張ったらあとは裏皮の問題です。裏皮の調節で響き線の音が明確になるところを探し、

ここではじめて響き線の張り加減を調節します。響き線の張り加減は、音を明確にするためというよりは、

ザッという響きの長さを調節するためだと考えて下さい。

張りすぎの響き線は十分な振動をすることができません。

それでは、良いチューニングの楽器で気持の良い演奏を!

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